三国山脈前衛 小出俣山 2010年4月18日

所要時間 3:35 ゲート−−4:40 千曲平−−7:26 小出俣山 7:41−−8:45 千曲平−−9:30 ゲート

ルート図。クリックでメモ入り地図を表示



 谷川岳の西方、オジカ沢ノ頭から南に派生する尾根上にはいくつかのピークが存在するが夏道は無く、この地域の植生から考えれば笹の激藪が広がっているだろうから登るなら残雪期が有利だ。DJFは数年前の4月に川古温泉を起点に小出俣沢を取り囲むU字型の稜線を日帰り周遊している。上越国境に近く冬は積雪が多くラッセルに苦労するので、雪が締まった4月以降が適当だろう。

 今週末は土曜日は東京都心でもみぞれが混じる天候で北関東の山々は相当量の新雪が確実に積もったと予想できたが、日曜日は1日だけ好天になるとのことで、貴重な残雪期の1日を無駄にするのはあまりにももったいない。下手をすると激ラッセルになるだろうが小出俣山に出かけることにした。ただし、雪の状況から考えてDJFのような周遊はまず無理だろうし、尾根末端から登り始めた場合、周遊どころか最高峰の小出俣山まで到達できない可能性の方が高いだろう。そこで、小出俣沢沿いの林道を歩き千曲平から小出俣山南尾根を登ってまず小出俣山山頂を踏んで、雪、体力の状況を見て三岩山方面に縦走するか決めることにした。十二社ノ峰方面は途中に危険地帯があり、今回のように不安定な新雪が積もったばかりではリスクが大きすぎると判断し、別の機会に挑戦しよう。

 今回は新調した登山靴とザックを試す試運転の意味もあった。近年購入した靴はゴアの布靴ばかりで昔の革靴と違っていきなり履いてもマメができることはほとんどないが、しばらくの間はどこかしら当たってちいと痛い思いをすることはある。連休は防水性がまだ高い新しい靴で残雪の山を満喫する予定なので、今のうちに慣らし運転する意味合いは大きい。ザックは大きな問題はないだろうが、スノーシューがうまくくくりつけられるかなどを見ておきたい。

ゲート前の駐車場(下山後撮影) 施錠されたゲート

 土曜日の午前中は高速道路のあちこちで通行止めがあったが、午後になってほとんどの個所の規制は解除され安心して出発する。赤城高原辺りでは周囲は真っ白かと思ったら意外に雪は残っておらず、山は白いが平地はほとんど溶けてしまったらしい。水上IC周辺は多少残っているが多くはなかった。県道270号線で仏岩トンネルを抜けて相俣に下り、古川温泉付近でウロウロ。真面目に地形図を見てゲートの閉まった林道入口をようやく発見、道路反対側に広い駐車スペースがあるが車は皆無でテントを背負っての入山者はいないようだ。土曜日に日帰りで入った人はいるかなぁ。林道をラッセルするかしないかで体力消耗の具合はかなり異なる。

千曲平の3.1km標識 千曲平で斜面に取り付く

 翌朝、気温が低い時間帯に距離を稼ぐため真っ暗な3時半に出発。林道歩きが終わるくらいに明るくなる時間のはずだ。空は星が広がり好天が期待できそうで麦わら帽子を持っていくことにした。ゲート付近は雪は無いがすぐに雪が出現、その上には足跡は残されておらず土曜日の入山者はゼロだったようだ。積雪は最初は数cm程度で問題ない程度だったが進むにつれて徐々に増えてきて、できるだけ積雪の少ない場所を選んで歩くようにした。小出俣沢左俣を渡ってからさらに積雪が増え、足首以上の深さとなる。824m標高点付近で「31」の標識が出現、これはゲートから3.1kmの距離を現している。ここにはピンクリボンが下がっており、通常はこの辺から尾根に取り付くようだ。周囲はようやく明るくなってきたがまだライトが必要で、照明が届く限られた範囲では続きのリボンは分からないが、この辺はどこを歩いても北に登れば自然に尾根に出るので気にせず適当に杉植林帯に入った。雪の締まりはなくスノーシューを装着。

杉→自然林と変貌 尾根に乗ると目印多数あり(大杉じゃなくて多すぎ)

 傾斜が出ると植林は終わって自然林に変貌、尾根ははっきりしないが登っていけばどこかで尾根に乗るので細かいことは気にせず、木の隙間を縫うように歩きやすい所を拾っていく。杉と違って落葉樹林は明るくライト不要の状況となった。傾斜があると積雪は少なくスノーシューを履いている意味が無くなるが外すのも面倒なのでそのまま歩く。左手が尾根てっぺんのようで薄い笹の斜面を斜めに登っていくと林道で見たピンクリボンがぶら下がった尾根に出た。これがまた数が多く、視界に必ず1,2個は存在する。この尾根は地形が明瞭でこんなに多く目印は必要ないと思うのだが。

横に寝たマンサクが尾根を塞ぐ これも邪魔な木

 この尾根は細い落葉樹+薄い笹が続き、無雪期でも問題なく歩ける程度でもしかしたら薄い踏跡があるかもしれないが、昨日の積雪があったため地面が見えず不明だ。この辺では雪が消えて結構日が経つようで笹は完全に立ちあがっていたが、登りではその方が歩きやすくて助かる。ここは笹より灌木の方がうるさく、根元から左右に無数に枝分かれした木が尾根上にはびこっている個所が数か所あり、今は葉が出ていないからいいものを新緑以降は歩きにくくなるだろう。スノーシューを履いたままでは今でもやっかいだが。

標高1300mで藪から開放される(無雪期は笹薮か?) 常緑樹帯はラッセル地獄

 標高1300mを越えると灌木が少なくなり背の高いブナが中心の植生に変貌、邪魔物が減って急に歩きやすくなった。雪質は思ったよりはマシで、締まりきっていないのでスノーシューでも足を出して体重をかけると数cm沈むが、場所によってはほとんど沈まない個所もあった。上空は青空ですがすがしく、右手には三岩山の稜線、左手には十二社ノ峰の尾根がすっきり見えている。少し風が出てきてざっくの麦わら帽子が煽られる。傾斜が緩んで微小ピークが出現し、ここだけ常緑樹が茂って目立つ場所だが、葉が茂って日当たりが無いせいか、雪は全く締まりがなくスノーシューでも脛まで潜る軟雪地獄だった。

標高1350m付近の露岩 東を巻いた(振り返ったところ)

 再び登りが始まり、標高1350m付近で大きな露岩が登場、岩の上には植生があって乗り越えられそうだったが、スノーシューを履いたまま藪漕ぎするのはごめんなので巻くことにする。左右どちらでも巻ける傾斜だったが右手(東側)を選択、岩の根元を通過した。下りの時に見た目印は岩の東側に付けられていた。

なだらかな尾根を登る 雪質が良ければ楽しめるのだが・・・

 その後はブナの斜面が続いて歩いていて気持ちがいいのだが、標高が上がってくると徐々に雪の状態は悪化していき沈む深さが足首程度の連続となった。また、北上するほど天気が悪化して三岩山くらいまでは晴れているのに小出俣山は雲に覆われガスがかかっているではないか。風も強まってきており、どうも日本海側に近い地方は天気予報よりも天候が悪い傾向らしい。それに今日は体調がイマイチで、風邪をひいて微熱があるらしくだるい。こりゃ、今日は小出俣山往復でおしまいかなぁ。

小出俣山が見えた こちらは阿能川岳
阿能川岳から南に伸びる尾根
烏帽子岳から南下する尾根

 標高1600m肩を越えるとガスに霞んだ小出俣山が間近に見えるが風がますます強まり体感温度もかなり低い。気温は-5℃程度で斜面を登り始めてからほとんど変わっていない。通常ならこの程度の気温ならシャツ1枚でちょうどいいのだが、体調不良で歩みが遅く運動量が落ちて体の発熱量が低くなっているようで寒く、登りなのにダウンジャケットを着た。私の登山スタイルではこんなことはまず無いのだが・・・・。表面はクラストしているが人間の体重を支えるには不十分で、1歩毎に10cm程度沈む雪に体力をジワジワと絞りとられる。単独行ではラッセルの交代要員もいない。

山頂の一角に出る。左端が小出俣山山頂 小出俣山山頂三角点付近(のはず)
小出俣山から見た三尾根岳 小出俣山から見た阿能川岳

 ようやく標高1700mを越えて1720mで尾根は右に曲がって山頂は目の前だが、雪質は相変わらずで歩みのペースが上がらない。そして主稜線手前で雪庇を越えるがこれがまたとんでもなく柔らかい雪でスノーシューでも膝まで潜り、いっそう体力を奪われた。主稜線上は新雪が吹きだまった雪庇と軟雪にほぼ全面覆われ、どこを歩いてもズボズボ潜る。これではとても阿能川岳まで歩けそうにない。別の機会に登ることにして今回は小出俣山だけで満足すべきだろう。GPSの示す山頂は少し西に行った肩の部分で、軟雪の中をここまで進むだけで相当疲労した。スノーシューでこれだからワカンだともっと凄かっただろうし、つぼ足では確実に途中撤退だっただろう。これが昨日の雪が無ければつぼ足で余裕だっただろうなぁ。まあ、覚悟の上で来たのだからしょうがない。天候は悪いままで細かい雪が強風とともに吹きつけ吹雪模様で、北側の稜線は雲の中で全く見えなかった。疲労が激しく雪庇の蔭に隠れて少々休憩。強風に雪が舞いあげられ雪庇蔭でも雪を被る。ザックの口を開けておいたままにしたら結構な量が中に入ってしまった。

下って笹が顔を出す標高 林道から尾根取り付き。目印あり
林道に残された熊の足跡 下山後も小出俣山〜阿能川岳付近は雪雲の中

 日差しもなく展望も無いまま下山開始。スノーシューを履いたままの下りでは新品の靴だと当たる場所があってガンガン下るわけにもいかず、我慢ならず傾斜が緩んだ場所でスノーシューを脱いでつぼ足で下ることにしたが、30cm程度の踏み抜きだったので下りなら大した問題にならなかった。かなり標高が下がるまで体温が上昇せずずっとダウンジャケットを着たままだったが、雪が消える頃にやっと体が温まってシャツ姿になり林道に降り立った。行きには気づかなかったが林道には熊が横断した足跡が残っていた。

 ゲートに到着し駐車場を見ると他に車が2台止まっていたが、たぶん山登りじゃないだろうなぁ。

 

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